呼吸器疾患に関する説明

肺がん

肺がんは、「小細胞肺がん」とそれ以外の「非小細胞肺がん」に分けられています。この両者は同じ「肺がん」といっても、かなり異なった病状をきたします。

小細胞肺がんは悪化するのが早く、ほとんどの場合は手術不能の進行癌の状態で発見されます。化学療法(抗がん剤治療)を中心に、放射線治療を組み合わせることで治療がなされますが、治癒に至る方は稀です。残念ながら、小細胞肺がんの新しい治療はこの10年くらい進歩していません。

小細胞肺がんについては、こちらを参照してください。
http://www.wjog.org/library/pdf/handbook_v3/sec10_web.pdf

 それ以外の肺がんをまとめて「非小細胞肺癌」といいます。これはさらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌に再分類されます(病理組織分類)。

肺がんの病理分類については、こちら。
http://www.lnet.info/lung/kind_stage/kinds.html

 

 治療は、肺がんの進行具合(病期分類、ステージ)によって異なります。

Ⅰ期、Ⅱ期の非小細胞肺がんは、手術で切除することがもっとも望ましいと考えられます。また、Ⅲ期の非小細胞肺がんは、放射線治療を中心に、化学療法(抗がん剤治療)を併用するのが一般的です。Ⅰ期からⅢ期までの肺がんは、「がんを治す」ことを目標にして治療を行ってゆきます。

残念ながら、Ⅳ期の肺がんを治癒させることは不可能です。Ⅳ期の進行肺がんに対しては、症状の緩和や延命を目的とした化学療法や分子標的治療が実施されます。もちろん、がんの症状を和らげるための「緩和治療」も重要になってきます。

肺がんの病期と治療についてはこちらを参照してください。
http://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_option.html

 

 肺がんの治療には。まだまだ解決すべき点が多く残されています。しかし、近年の医学の進歩もめざましいものがあります。
化学療法(抗がん剤治療)は、吐き気がしたり、髪の毛が抜けたり、といった「つらい」イメージが大きいでしょう。しかし、近年は「できるだけ楽に」治療を受けられるような進歩がなされています。抗がん剤の吐き気を抑えるための処置が進歩し、入院せずに通院で治療ができている方もおられます。抗がん剤自体も改良が進み、現在もっとも多く使用されている抗がん剤「アリムタ(一般名ペメトレキセド)」は、点滴時間も短く、脱毛も少ないことが知られています。

抗がん剤アリムタについては、こちらを参照してください。
https://www.lilly.co.jp/lillyanswers/data/patient/ALM-P032(R2).pdf

 現在、もっとも期待されている肺がん治療の一つが、「分子標的治療」です。
分子標的治療とは、がん細胞が生きるために不可欠な「増殖アンテナ」のような部分(分子標的と言います)を狙い撃ちしてがん細胞を殺すものです。ちょうど、がんの「アキレス腱」とでもいうべき急所を直接攻撃するような方法で、現代最高の医学知識が動員された最新の治療です。この治療を行う場合、がん細胞の「遺伝子検査」を行って、がん細胞の性質を詳しく分析する必要があります。

分子標的治療」については、こちらを参照ください。
https://www.lnet.info/lung/lecture/chemotherapy04.html

「EGFR遺伝子変異」という遺伝子異常で生じた肺がんにはイレッサ(一般名ゲフィチニブ)、タルセバ(一般名エルロチニブ)といった分子標的治療薬がよく効きます。近年の研究で、このような遺伝子異常がみつかった患者さんでは分子標的治療による延命が期待できることがはっきりしました。

肺がんの遺伝子検査については、こちらを参照ください。
http://www.lnet.info/lung/egfr/index.html

分子標的治療薬イレッサの詳細については、こちら。
http://www.iressa.jp/patient/pati_index.asp

分子標的治療薬タルセバについては、こちら。
http://chugai-pharm.jp/hc/ss/pa/sf/tar/lg/index.html

 新しい分子標的治療薬として最近新たに使用できるようになった薬剤が「ザーコリ(一般名クリゾチニブ)」です。この薬剤が効く患者さんは非小細胞肺癌の5%程度ということです。

ザーコリについては、こちら。
http://xalkori.jp/caution_patient.html

 がん細胞を直接攻撃するというよりは、抗がん剤の働きを助けて効果を高めるような異色の分子標的治療薬がアバスチン(一般名ベバシズマブ)です。一般に、アバスチンを抗がん剤に併用すると、抗がん剤の効き目(奏効率)が2倍くらいになるという報告があります。ただし、この薬剤が安全に使用できる患者さんは限られており、慎重な判断が求められます。

アバスチンについては、こちら。
http://chugai-pharm.jp/hc/ss/pa/sf/ava/lg/index.html

 

 以上、近年の肺がん治療にはめざましい進歩がみられています。
しかし、これらの恩恵をすべての患者さんが受けられるわけではありません。臨床試験の実績はあくまで「元気で体力のある」患者さんを対象にしたものです。実際には、高齢であったり、持病があるなどの理由から強力な肺がん治療を受けることのできない患者さんが少なくありません。当院のデータによると、75歳以上の進行肺がんの患者さんで抗がん剤治療を受けることができたのは、わずか3割に過ぎませんでした。

 体が弱く、じゅうぶんな治療が受けられない患者さんには、がんの痛みや苦痛を軽減するための「緩和治療」が行われます。また、強力な肺がん治療を受けて一時的にがんを抑えることができたとしても、多くの患者さんはいずれ肺がんの「再発」が起こり、病状は悪化します。これらの方々にとっても緩和治療は重要な意味を持ちます。
当院は、積極的な治療以外に緩和治療にも力を入れています。

緩和治療(緩和ケア)についてはこちらを参照ください。
http://ganjoho.jp/public/support/relaxation/index.html

 

その他、肺がん患者さんへのお役立ち情報はこちら。

がん情報タウン 生活上のお役立ち情報
https://www.lillyoncology.jp/Default.aspx

もっと知ってほしい肺がんのこと(冊子のダウンロード)  おすすめです!
https://www.lillyoncology.jp/document/

エルねっと(肺がん全般)
http://www.lnet.info

日本肺癌学会 一般の皆さまへ「よく分かる肺がん」
http://www.haigan.gr.jp/modules/ippan/index.php?content_id=1

国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス「肺がん」
http://ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html

がんになったら手にとるガイド
http://ganjoho.jp/hikkei/index.html